書も積もりし

小説、哲学、雑感など。誤字・脱字が多いのが哀しい

マルクス主義における疎外論と物象化論

何かためになる? 記事を書こうと思い、最近もっぱら創作作品を載せていたので、何かを解説するかのような体の記事を書きたいと思います。マルクス主義における疎外論と物象化論1、疎外論とは 「疎外」という言葉は「疎外される」という受動態の形でたまに…

私とショパンの夢(小説)

私とショパンの夢 misty 私はショパンが好きだ。そのことを彼女に話すと、()は「あだなるパンは天空から降ってきたものではない。それはパン屋が労力をかけて作ったものだ」とひねくれたことを言ってきた。あだなるパン、と聞いた私は、それが諸―パン、つま…

夢の中で死んだ鳥は現実(2)

ところでバードたちはどうして世界の原初を、肉体を持たぬ概念としてのバードとして探索しているのか? 錘の肉体を持つにはまだはやいし、それに神は決めかねていた。そう、もちろんアダムとイヴ——〈愚かなるもの〉たちも神話体としてのそれであるし、彼らも…

夢の中で死んだ鳥は現実(1)

夢の中で死んだ鳥は現実 misty バードが死んだ。彼女の夢の中で死んだバードはいかにも薔薇色に染められた概念としての現実だったのだ。彼女はバードを思い浮かべた。そこには宗教の鳥があった。彼女と私は宗教の鳥に魅せられていた。そこがはじまりの地点だ…

外れていくもの

外れていくもの misty 外れていくもの、中心から逸れていくもの。それらは端的に、美しい。はっきりこう言いたい。外れていくものは、確かに私自身であり、かつての私、もちろん現在の私である可能性も否めないが、とかく寒々とした過去の私への憧憬がひきず…

光の夏(詩)

公募締め切りを大幅に過ぎてしまった詩の一つを掲載させて頂きます。本当に送る行先が消えてショックです・・・ 光の夏 mistyせかいがカクサンしてゆく 我らのせかい 否、ワタシのせかい 道、一本の光 お前の影がお前自身をこうも残酷に作り上げた 車道の端…

マゼッパ、鬼火、悲愴

小説の一つのネタとして書きました。最近文章を発表できていなかったので自分を揺り動かすためにもブログにしました。■マゼッパ、鬼火、悲愴 フランツ・リストの超絶技巧練習曲・第四番ニ短調「マゼッパ」は闇への信仰の序曲、すなわち闇への信仰の〈道〉を…

切っ先を突きつけろ(冒頭)

俺はまず、自分の眼前に刃が突き立てられている状況を自分の精いっぱいの想像力で再現した。なぜなら俺はあきれるほどに弱く、死の「存在」というものにつねに怯えきっているからだ。俺は死ぬことが怖い。自分が死ぬイメージをうまくもてない。それに死ぬの…

菅原孝標女『更級日記』(ビギナーズクラシック)——日本日記文学の金字塔

更級日記 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)作者: 川村裕子出版社/メーカー: 角川学芸出版発売日: 2007/04/25メディア: 文庫 クリック: 23回この商品を含むブログ (13件) を見る その夜は、「くろとの浜」といふ所にとまる。片つ方はひろ山なる所…

【哲学】竹田青嗣の哲学について——ニーチェ論

昨年(2017年10月あたりだろうか)、哲学者であり評論家の竹田青嗣さんの主著と呼ばれるであろう様な大作が書店に登場した。欲望論 第1巻「意味」の原理論作者: 竹田青嗣出版社/メーカー: 講談社発売日: 2017/10/17メディア: 新書この商品を含むブログを見る…

キャントユーセレブレイト?(短編)

エッセイと小説の中間のような書き物です。ご感想、批判、ぜひお待ちしています! CAN’T YOU CELEBRATE? misty 僕と安室奈美恵の人生は一ミリたりとも交わらなかった。僕は安室奈美恵という輝ける実在から何一つ影響を受けなかったし、何物も授かることもな…

潮騒(1)

Eは海岸沿いを歩いていた。海を眺めに来ていた。 海上はきらめく。時刻は昼下がりで、太陽は完璧にも似た灯を放って水上の銀波を操っていた。Eはしかし物思いに耽っていた。Eは一つの絵画のことを考えていた。エドワルド・ムンクのかの有名な「叫び」につ…

「死ね」という言葉の新しい時代性

若い人が簡単に発する「死ね」という言葉の肯定性を私は見ている。「死ね」という言葉は普通は否定的に捉えられるからだ。しかし、現実に「死ね」という言葉やセリフはこの世界にありとあらゆるほど表象している。これは、否定的な死ねだけではないというこ…

圧倒的に面白いと思った小説20選

29歳の僕は、24歳のときに文学に再びハマりました。のんべんだらりと読んできた24年間と、積読がこんなにたまるなんて!と思った5年間の読書歴の中から20作品選んでみようと思います。1、フェルディナン・セリーヌ『夜の果てへの旅』夜の果てへの旅〈上〉…

Dark Side Of The Moon(現代への批判)

Dark Side Of The Moon(現代への批判)序 ……がない。理念がない。パトスがない。遊びがない。希望がない。「僕らは今度こそ、希望の虚しい氾濫の中で溺死しそうです。」*1 溢れすぎているようで、内容がない。中身がない。総じて、「無い」ことが当たり前に…

ハッキング分子――インフルエンザ、天候、物流

社会の〈流れ〉(進行、過程)を停滞させるものがこの世にはありとあらゆるほどある。すぐに思いつくのは悪天候だ。たとえば人間の社会によって雨はあまり好ましくない(本当は恵みの雨なのだが)。大雨が降った日には交通システムに甚大な影響を与える。と…

1月の試み マルクスへの接近

去年の暮れから、僕にまた哲学熱が再来した。この半ば風邪気味による微熱との併用も手伝って、僕はサルトルの『方法の問題 弁証法理性的批判序説』を読み切った。この本を簡単に説明すると、序説、つまり本論たる「弁証法的理性批判」への準備段階として、サ…

仮面の太陽(小説)

仮面の太陽 作:光枝 初郎しらいちゃんへ 最初に太陽があった。真っ赤な太陽が南下して炎天の地獄を作りあげた後には、文句を言う奴など一人もいるはずはなかった。天気は蛇行し、気が付けば空には夕暮れが漂い、海辺には真っ赤だったはずの太陽も頭を垂れて…

よく見る夢のパティーン

前段階として、夢は小説になるか、お話として完成させることができるか、という点から話したいと思います笑 めんどくさかったら飛ばしてください。 実に強烈で、ものすごくイメージの豊かな不思議な夢を見た場合、またその夢の世界の輪郭がありありと残って…

レーニン『国家と革命』の途中までのまとめ&哲学について

図書館に立てこもっていたら割と急な雨に降られたので、時間の許す限りブログを書きます。昨日から、レーニンの『国家と革命』という比較的読みやすい本をよみはじめました。国家と革命 (ちくま学芸文庫)作者: ヴラジーミル・イリイッチレーニン,Vladimir Il…

マジで最近良書が集まりすぎて

本棚にも整理しきらないし、頭の中がパンクしているので、最近買ったりした大事な本(主に哲学書)をここで整理させてください。ドイツ・イデオロギー 新編輯版 (岩波文庫)作者: マルクス,エンゲルス,廣松渉,小林昌人出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2002/…

プロジェクト「S」の整理(メモ書き)

仮にある学問的な好奇心・探求心に基づく勉強、読書、ある目的を持った調査をプロジェクトSと仮にしておいて、そのSのためにも幾つか自分が内発的におさえておきたい文脈が整理できたのでここに書きます。 ★ジュディス・バトラーという現代思想者基本的に…

存在と生活の条件に関する文献リスト

新年明けました。3月から4月にかけて、論文として1,2本にまとめたいと思っている内容が仮に「存在と生活の条件に関して」というものなんですが、この目的意識に沿ってまたあらためて哲学を勉強し直そうと思ったら、今にしてすでに本が増殖しすぎです汗 …

サルトル『方法の問題』を読み終えての雑感

実存主義とは人間学そのものである。 ――『方法の問題』pp.178 サルトル全集〈第25巻〉方法の問題 弁証法的理性批判序説(1962年)作者: サルトル,平井 啓之出版社/メーカー: 人文書院発売日: 1962メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログを見る 今…

美しい不穏 ロベルト・ボラーニョ『チリ夜想曲』

一緒にしなくていい、とピノチェト軍人が言った。一緒に来たまえ。あとについていくと、屋敷の裏の庭園を望むことができる大きな窓があった。満月の光がプールの滑らかな水面できらめいていた。将軍は窓を開けた。我々の背後から他の将軍たちがマルタ・ハー…

世界一の感性作家――『アナイス・ニンの日記』

わたしは嘘で身をくるんでいるが、それらの嘘に魂を射貫かれることはない。わたしの嘘は他者の不安を鎮める「生の嘘」であり、わたしの一部になることはないというように。衣装のようなものだ。(pp.215) わたしが興味をもつのは核ではなく、その核が増殖し…

ラテンとスペインの血を僕はあの年に知っていた #4

ナイトとの恐るべき決戦。 「反文学」のいつものグループ会議(基本的には週一、あとは要望があれば任意で他の日に開催されることもあった)で、僕たちは互いの作品をけちょんけちょんにけなしあって、疲弊した後、濁りそうになった空気を元に戻す為に全く違…

ラテンとスペインの血を僕はあの年に知っていた #3

ちなみに、「反文学」の連中は、Tfillのグループ会議(総会、などともったいぶった呼び名で呼ばれたりもしていた)にも参加していたりするので、このあたりはごっちゃだった。というより、Tフィルの中で特に仲が良く気質も似ている連中がいるなということに…

ラテンとスペインの血を僕はあの年に知っていた #2

一人で小説は書かないといけない、しかし本当にたった一人で小説を書くことはとても困難だ。 巷には小説投稿サイトというのがいくつも流行っていて、何やら人気ランキングみたいなものを掲げているのもあるんだけど、そういうものを読んでも自分の書きたい純…

ラテンとスペインの血を僕はあの年に知っていた#1

ラテンとスペインの血を僕はあの年に知っていた #1これから、ある一定の期間における過去を簡潔に(といっても簡潔にはならないのだが)振り返ろうと思う。 例えばその期間をXと呼ぶことにしよう。期間X以前の僕はどうだったかというと、大学を何回も留年し…