書も積もりし

小説、哲学、雑感など。誤字・脱字が多いのが哀しい

潮騒(1)

Eは海岸沿いを歩いていた。海を眺めに来ていた。 海上はきらめく。時刻は昼下がりで、太陽は完璧にも似た灯を放って水上の銀波を操っていた。Eはしかし物思いに耽っていた。Eは一つの絵画のことを考えていた。エドワルド・ムンクのかの有名な「叫び」につ…

「死ね」という言葉の新しい時代性

若い人が簡単に発する「死ね」という言葉の肯定性を私は見ている。「死ね」という言葉は普通は否定的に捉えられるからだ。しかし、現実に「死ね」という言葉やセリフはこの世界にありとあらゆるほど表象している。これは、否定的な死ねだけではないというこ…

圧倒的に面白いと思った小説20選

29歳の僕は、24歳のときに文学に再びハマりました。のんべんだらりと読んできた24年間と、積読がこんなにたまるなんて!と思った5年間の読書歴の中から20作品選んでみようと思います。1、フェルディナン・セリーヌ『夜の果てへの旅』夜の果てへの旅〈上〉…

Dark Side Of The Moon(現代への批判)

Dark Side Of The Moon(現代への批判)序 ……がない。理念がない。パトスがない。遊びがない。希望がない。「僕らは今度こそ、希望の虚しい氾濫の中で溺死しそうです。」*1 溢れすぎているようで、内容がない。中身がない。総じて、「無い」ことが当たり前に…

ハッキング分子――インフルエンザ、天候、物流

社会の〈流れ〉(進行、過程)を停滞させるものがこの世にはありとあらゆるほどある。すぐに思いつくのは悪天候だ。たとえば人間の社会によって雨はあまり好ましくない(本当は恵みの雨なのだが)。大雨が降った日には交通システムに甚大な影響を与える。と…

1月の試み マルクスへの接近

去年の暮れから、僕にまた哲学熱が再来した。この半ば風邪気味による微熱との併用も手伝って、僕はサルトルの『方法の問題 弁証法理性的批判序説』を読み切った。この本を簡単に説明すると、序説、つまり本論たる「弁証法的理性批判」への準備段階として、サ…

仮面の太陽(小説)

仮面の太陽 作:光枝 初郎しらいちゃんへ 最初に太陽があった。真っ赤な太陽が南下して炎天の地獄を作りあげた後には、文句を言う奴など一人もいるはずはなかった。天気は蛇行し、気が付けば空には夕暮れが漂い、海辺には真っ赤だったはずの太陽も頭を垂れて…

よく見る夢のパティーン

前段階として、夢は小説になるか、お話として完成させることができるか、という点から話したいと思います笑 めんどくさかったら飛ばしてください。 実に強烈で、ものすごくイメージの豊かな不思議な夢を見た場合、またその夢の世界の輪郭がありありと残って…

レーニン『国家と革命』の途中までのまとめ&哲学について

図書館に立てこもっていたら割と急な雨に降られたので、時間の許す限りブログを書きます。昨日から、レーニンの『国家と革命』という比較的読みやすい本をよみはじめました。国家と革命 (ちくま学芸文庫)作者: ヴラジーミル・イリイッチレーニン,Vladimir Il…

マジで最近良書が集まりすぎて

本棚にも整理しきらないし、頭の中がパンクしているので、最近買ったりした大事な本(主に哲学書)をここで整理させてください。ドイツ・イデオロギー 新編輯版 (岩波文庫)作者: マルクス,エンゲルス,廣松渉,小林昌人出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2002/…

プロジェクト「S」の整理(メモ書き)

仮にある学問的な好奇心・探求心に基づく勉強、読書、ある目的を持った調査をプロジェクトSと仮にしておいて、そのSのためにも幾つか自分が内発的におさえておきたい文脈が整理できたのでここに書きます。 ★ジュディス・バトラーという現代思想者基本的に…

存在と生活の条件に関する文献リスト

新年明けました。3月から4月にかけて、論文として1,2本にまとめたいと思っている内容が仮に「存在と生活の条件に関して」というものなんですが、この目的意識に沿ってまたあらためて哲学を勉強し直そうと思ったら、今にしてすでに本が増殖しすぎです汗 …

サルトル『方法の問題』を読み終えての雑感

実存主義とは人間学そのものである。 ――『方法の問題』pp.178 サルトル全集〈第25巻〉方法の問題 弁証法的理性批判序説(1962年)作者: サルトル,平井 啓之出版社/メーカー: 人文書院発売日: 1962メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログを見る 今…

美しい不穏 ロベルト・ボラーニョ『チリ夜想曲』

一緒にしなくていい、とピノチェト軍人が言った。一緒に来たまえ。あとについていくと、屋敷の裏の庭園を望むことができる大きな窓があった。満月の光がプールの滑らかな水面できらめいていた。将軍は窓を開けた。我々の背後から他の将軍たちがマルタ・ハー…

世界一の感性作家――『アナイス・ニンの日記』

わたしは嘘で身をくるんでいるが、それらの嘘に魂を射貫かれることはない。わたしの嘘は他者の不安を鎮める「生の嘘」であり、わたしの一部になることはないというように。衣装のようなものだ。(pp.215) わたしが興味をもつのは核ではなく、その核が増殖し…

ラテンとスペインの血を僕はあの年に知っていた #4

ナイトとの恐るべき決戦。 「反文学」のいつものグループ会議(基本的には週一、あとは要望があれば任意で他の日に開催されることもあった)で、僕たちは互いの作品をけちょんけちょんにけなしあって、疲弊した後、濁りそうになった空気を元に戻す為に全く違…

ラテンとスペインの血を僕はあの年に知っていた #3

ちなみに、「反文学」の連中は、Tfillのグループ会議(総会、などともったいぶった呼び名で呼ばれたりもしていた)にも参加していたりするので、このあたりはごっちゃだった。というより、Tフィルの中で特に仲が良く気質も似ている連中がいるなということに…

ラテンとスペインの血を僕はあの年に知っていた #2

一人で小説は書かないといけない、しかし本当にたった一人で小説を書くことはとても困難だ。 巷には小説投稿サイトというのがいくつも流行っていて、何やら人気ランキングみたいなものを掲げているのもあるんだけど、そういうものを読んでも自分の書きたい純…

ラテンとスペインの血を僕はあの年に知っていた#1

ラテンとスペインの血を僕はあの年に知っていた #1これから、ある一定の期間における過去を簡潔に(といっても簡潔にはならないのだが)振り返ろうと思う。 例えばその期間をXと呼ぶことにしよう。期間X以前の僕はどうだったかというと、大学を何回も留年し…

森の神話学――大江健三郎『M/Tと森のフシギの物語』

M/Tと森のフシギの物語 (岩波文庫)作者: 大江健三郎出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2014/09/18メディア: 文庫この商品を含むブログ (3件) を見る 目次 序章 M/T・生涯の地図の記号 第一章 「壊す人」 第二章 オシコメ、「復古運動」 第三章 「自由時代」…

詩二つ

パレード小人たちは歩く 歯の上 歯車の狭間 そこは 血塗れの 床と 受苦で満ち満ちている 痛みをさしだすのだ 薬に代えてやろう 熱を冷ますための 水滴 ひばりの声小人たちは踊る 葉の上 樹海の森 水滴が 恍惚を含み 歌は讃えるものとなりて るるるらら なん…

不透明さという苦しみ――鹿島田真希『六〇〇〇度の愛』

六〇〇〇度の愛 (新潮文庫)作者: 鹿島田真希出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2009/08/28メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 5回この商品を含むブログ (17件) を見る 鹿島田真希さんは僕の好きな作家なのだが、色々苦労が多いみたいで、「六〇〇〇度の愛」で…

晩年の晦渋さ――大江健三郎『晩年様式集』

晩年様式集 (講談社文庫)作者: 大江健三郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2017/01/13メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る 大江健三郎が2013年に発表した今のところの最新作『晩年様式集』がどんな小説であるか。冒頭部分の一節と、この小説の目次…

法学から見た世界#1 憲法1

今回は僕が大学のとき法律学をかじっていたにも関わらず当時買っていた教科書はいまや散乱し、勿体ないままだと思ったのでもう一度教科書を読みながら復習したり法学を通して論理的な思考を鍛え、他の学問知識からのアプローチも少しできたらいいなと思って…

繰り返し読んだり観たりすること

昔は、一度読んだ本はあまり読みかえさない、なぜならもっともっと色んな本を読まないといけないからだ! などと僕は意気込んでいました。 今になっても繰り返し読む本は限られるのですが、それでも自分にとってとても大切な作品は手元に置いて少しでも味わ…

マリオ・バルガス=リョサとお知らせ

ペルーのノーベル賞作家リョサの作品はほぼ全て日本にも翻訳されている。その中で僕が完読したのは『世界終末戦争』『密林の語り部』『悪い娘の悪戯』『水を得た魚』、途中読みが『フリアとシナリオライター』と『緑の家』です。 実に作品の多様性が満ちてい…

読書日記

・ヴィクトル・ユゴー『レ・ミゼラブル』まだ100Pほどでジャン・ヴァルジャンの過去の話の途中だけどのっけからずっと面白い。ユゴー作品は以前に『ノートル・ダム・ド・パリ』を途中まで読んでいて、話しの進め方の面白さ、登場人物の魅力がすごいこと…

闇は僕の袖口をひっぱって

闇は僕の袖口をひっぱって自分への自信のなさというものはそら恐ろしい。僕はまたその景色を見ることになった。昨日。自信というものが消失していく。体という抜け殻は残るが、活力を送りこむための〈魂〉は荒廃している。 僕は昨日、静かに、狂おしいほど静…

花の美しさ――川端康成、THE NOVEMBERS

昨日書店で川端康成の『美しい日本の私』の冒頭を読んだら、花は眠らないことに思い至って、驚いた。というようなことが最初に書かれてあってものすごく惹かれた。 川端は、旅行の際などに部屋の窓から見える景色や活けてある花などを愛でるが、その花が人間…

迫害される狂人たち――排除型社会

まずはじめに、「一般人」というものは実在しない。それは計算されるもの、計算上の数学的な概念でしかない。ところが、法律やルールなどの《法》は、この一般人を全ての基準にして道路を作ったり労働法を整備する。だからこそ《法》なぞはやけっぱちな産物…