2016年下半期読書ベスト20 ①
上半期を15作やったのですが、下半期は20作選びました。
11月までの読書なので、出るのが早いです(苦笑) また、下位のものはちょっと辛口になっていますがほとんど良い読書でした。
20位~16位までを最初に!
20位 カルペンティエール/失われた足跡
マジックリアリズムの先祖にもあたるカルペンティエールの代表作が岩波文庫で、ということでだいぶ期待して読んだのですが、うーん個人的にはハズレ。
カルペンティエールに申し訳を聞いてもらうと、まだ完読していない『春の祭典』などの著作が、僕にはビビビッときたんです。合過ぎたのかもしれない。まぁ弁解を抜きにしていうと……
とても重厚な叙述で、いま何日目の旅行で主人公たちがどこで何を語っているのかが分からない、それは良いのだが、長い……と思ったのが一つ。二つ目が決定的なのですが、主人公はアマゾン奥地への旅で同伴していた女性科学者を、ものすごい蔑んで、ひどい仕方で見放します。それがたまらなく嫌だった。女性軽視をあからさまに書いているのかなんなのか、主人公の嫌悪が身も蓋もないくらいひどいので、よんでいい気分にはなれませんでした。
だからこの作品のもっと良い所で引っ掛かってない。それ以前に……という感じ。もちろん、『春の祭典』はちゃんと積読で僕を待ってくれています!苦笑
これは仕方なくこの順位というか、「砂の女」はめっちゃ良かったです。後味も悪いし、本当に「砂」の物語って感じだし、話もよく出来てるし……。 もっともっと安部公房を読まなければならない、たくさん読みたい、と思ってこの順位です。今の段階では「壁」が圧倒的に好きすぎです。
18位 ジェームズ・ジョイス/ユリシーズⅡ
『ユリシーズ』の第11章から15章まで。 第13章はブルームと脚を悪くしている貴婦人ガーディの、かなり変態的でエロティックで美しくもある砂浜シーンで、僕はこの章が一番好きだなと思いました。語りがガーディからブルームへと移って、意識の流れの手法も再確認できましたしね……。 ただ、14章が圧倒的すぎた。そして15章に至ってはもうわけがわからなすぎてパンク。。
ユリシーズⅠを読んだ時点でなんだかとても胸悪くなるような要素もあって、自分には合わないかなと思っていたんですが、時間が経過したら、あの妙におしゃべりだったり内心の声が丸ぎこえのリズムが心地よく思えてきて、楽しんでⅡに取り組んだつもりですが、またもやノックアウトされました(苦笑) Ⅲはいつか読む日が来るのか…… あ、先に『ダブリナーズ』を読みたいです(逃)
17位 フアン・ガブリエル・バスケス/物が落ちる音
コロンビアの現代作家バスケス。これは「発掘」モノです。そして、今年もう一冊バスケスの本が翻訳されて出版されているのですが、そっちの方がランキングの上位にしっかり乗りました。
「物が落ちる音」は、5章立ての内の最初の第1章が個人的にはすごく印象深くて、ハッキリ言ってあとは惰性で読めてしまうようなものでした。しかし、本当に叙述がうまい。ある意味日本の村上春樹的な作品だとも言える。バスケスは面白い。それを確信するためにどんどん読まれていい作品かなとは思います。
「砂時計」自体は圧倒的に面白かったです。でも暗い。暗すぎると思う……この暗さと緊張感は、東欧の独特の歴史背景や時代の中の意識をもっと理解していないと適切に噛みくだけないんじゃないか。余韻は深いです。『東欧の想像力』という素晴らしい東欧文学のガイドブックのおかげで、ダニロ・キシュのみならずたくさんの東欧の作家を今年は知って読むことができました。ダニロ・キシュの翻訳は他にも池澤夏樹さんの世界文学シリーズに『庭、灰』があるからそっちもたくさん読まれているかもしれません。
②は15位~11位の5作品を書きます(*^_^*)