2016年下半期読書ベスト20 ②
15位 ジェイムズ・ジョイス/ユリシーズⅠ
1章―10章まで。ジョイスについて何も知らずに読みはじめるとやはり困惑してしまう。しかし、何という自由さ、創造性。個人的には第3章の「意識の流れ」に則った自由散文がとても好き。人物関係がけっこう複雑なので、前置きで翻訳者が書いてくれた情報を元にしてもけっこう難解。そういう意味でも厄介な著作ではある。
14位 マシャード・ジ・アシス/ブラス・クーバスの死後の回想
ブラジルの作家。コロンビアやアルゼンチンのポルトガル語で書かれたラテンアメリカ文学とはまた毛色の違う、独特すぎる文章。基本的に非常に自由奔放。ブラス・クーバスを名乗る語り手にかなり振り回されるが、この振り回しが心地よい。いきなり章が終わったり、本質的に思えないところを引きのばしたり……通常の文学とは異なるので、ある意味「文学作品」にお固いイメージを抱いている一般の読者にも、是非オススメしたい一作である。いいね、これはいい。
13位 三島由紀夫/潮騒
まあこれは入れとかないと。とても爽やかでした。特に「裸」の肉体にまつわる記述が印象的。個人的には、これは肉的な、人間の「美しさ」というよりも、原初的な人間=自然、大地の「崇高さ」を表象していると思われました。単にセクシャリティの話題に留まらない、大きな視野を持った作品だと思います。
12位 ジョルジュ・ペレック/傭兵隊長
画像のイメージが(Amazon)に無いのが悔やまれます。「傭兵隊長」という1枚の絵(しかも贋作)と贋作作家にまつわる、非常に興味深い小説。というかむちゃくちゃ面白いです。語り手の不穏さ、そして時系列の寸断、物語の進行につれて分かってくる謎……。ミステリー仕立てであるが、とにかく面白い。さすが水声社!(笑)
11位 川端康成/古都
美しい……。とても美しいです。人間の情緒と、京都の美しさ。登場人物がはんなり(笑)と交わす所作や台詞もとても静かで印象的だし、姉妹の関係も好きです。とにかく好き。